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個人間精子提供の問題点

個人間精子提供のトラブル事例がネットニュースやワイドショーで取り上げられ、「精子提供」「精子取引」という言葉が話題になり、精子提供ボランティアを名乗る個人がTwitterなどのSNSを中心に急増しています。
個人間精子提供の問題点








精子提供を必要とする人

従来は無精子症などの絶対的男性不妊の婚姻関係にある夫婦が、不妊治療の一環として医療機関で精子提供を受けるというのが一般的でした。

しかし近年ではLGBTQの方への理解も進み、レズビアンカップルが精子提供により子どもを育てるという選択が出てきています。

他にも、男性が苦手であったり、理想の男性と巡り合えなかったなど様々な事情で、結婚は考えていないが子どもを持ちたいという女性が選択的シングルマザーとして精子提供を受けて子どもを育てているという事例も出てきています。


いずれも少子化対策の観点からは素晴らしいことではありますが、
  • 結婚と出産の順序に重きを置く方
  • 性的マイノリティを認められない方
  • 反出生主義の方
  • ひとり親世帯を支援する助成に不満を持つ方
  • ひとり親への助成の悪用を懸念されている方
など多様な意見の人がいるもの事実です。




個人間精子提供に頼らざるを得ない理由

精子バンクという言葉は広く知られているため、危険な個人間の精子提供を受けるくらいなら精子バンクを利用すればよいと考える人は少なくないようです。

しかし誰でも精子を購入できる精子バンクは海外にしか存在しておらず、精子ドナーのほぼ100%が外国人で、日本人ドナーは登録されていません。

インターネットから海外の精子バンクで凍結精子を購入し、日本に輸入することは出来ますが、費用が1回あたり30万円程度かかります。

そのため日本では海外の精子バンクを利用した妊活は一般的ではなく、SNSやマッチングサイトを介した個人間の精子提供、もしくは医療機関での非配偶者間人工授精(AID)治療が一般的となっています。





非配偶者間人工授精(AID)

日本の不妊治療には非配偶者間人工授精(AID)という方法があり、婚姻関係にある絶対的男性不妊の夫婦のみが受けることができます。
なお、FTM(女性として出生し性自認が男性である人)は受けることができません。

この非配偶者間人工授精(AID)にも精子ドナーの減少という問題があり、新規の受付を停止している医療機関も出てきています。

精子ドナー減少の理由は、生まれてくる子どもの出自を知る権利が注目されるようになり、これまで匿名とされてきた精子ドナーの個人情報を開示する必要性が出てきたためです。

医療機関が確保する精子ドナーは医学部学生などの医療関係者で、精子ドナーの個人情報はAIDを受ける夫婦にも、生まれてくる子どもにも伝えないという精子ドナーに配慮した仕組みでした。

しかし現在は精子ドナーとしての同意書に、生まれてきた子どもへの個人情報開示の同意が求められるようになり、精子ドナーの確保が困難になったという背景があります。

2021年に国内初の民間精子バンクが運用開始と報じられましたが、個人で誰でも購入できるものではなく、医療機関への提供に限られており、医療機関での精子ドナー確保を支援するものとなっています。

そしてAIDでは、凍結精子を用いた人工授精しか選択肢が無く、間口の狭さ・妊娠率の低さから精子提供を必要としている人が多いのが実態です。

そのため、FTMの夫婦、レズビアンカップル、選択的シングルマザーを希望する女性のみならず、婚姻関係にある夫婦についてもSNSやマッチングサイトを介した個人間の精子提供を受ける人が増加しています。




個人間精子提供の問題点




  • 性行為を目的とした提供者の存在

ニュースやワイドショーで精子提供について報じられる内容があまりにも性的であるため、テレビなどで特集されるたび、SNSなどに性行為を期待した精子提供ボランティアのアカウントが急増するという現象が起きています。

性行為を期待した精子提供ボランティアが、不妊で悩んでいる方やレズビアンの方に、SNS上で見境なく性行為を持ち掛けるなど問題行動を起こしている事例もあります。

こういった精子提供ボランティアの行動が、精子提供ひいては精子提供により子どもを望むご家庭への偏見や差別的感情を助長するものとなっています。




  • 一人の提供者から何人もの子どもが産まれている

個人の精子提供者の頭数は多いですが、その多くは提供経験がなく、 一部の精子提供者が何人にも提供している現状があります。

個人間の精子提供において、提供実績とはイコールで妊娠率につながることから、精子提供を受ける側からも重要とされるポイントであり、それが同じ提供者が何人にも提供してしまうことに繋がります。

実績が重要であるという事情があるため、新規の精子提供ボランティアアカウントが、提供実績がないにもかかわらず「何名に提供しました」と虚偽の書き込みをしている場合も多々見受けられます。

なお、医療機関での非配偶者間人工授精(AID)治療では、日本産婦人科学会の規定にならい、一人のドナーからは10人までと上限が定められています。

  • トラブルになったときに対処ができない

医療機関での非配偶者間人工授精(AID)は、病院での手術となるため信頼性も高く、何かあったときも病院は逃げないので対応する手段があります。

対して個人間の精子提供は、経歴や国籍など最終的には提供者を信頼するしかない部分が多く、
  • 逃げられる
  • 音信不通になる
  • タイミング法(性行為)を求められる
  • 家庭に干渉しようとしてくる
などといったリスクがあります。
そのため近年では個人間の精子提供を受ける際に、同意書を交わす必要性が周知されてきています。




解決に向けた取り組み


精子提供を望む女性に話を伺うと、多くの方が信頼できる機関から提供を受けられるならそれが一番良いと感じているものの現状はそうでないため、個人からの精子提供を受けていることが見受けられます。

  • 一人の提供者から多くの子どもが産まれている
  • 個人間精子提供ではトラブル時の対処が難しい
  • 信頼できる機関から提供を受けることを望んでいる


これらの問題の解決策は2つです
  • 個人がネット注文できる精子バンク企業を日本で設立する
  • 非配偶者間人工授精(AID)を子どもを望むすべての女性が受けられるようにする

個人間精子提供ではトラブル時の対処が難しい点と、被提供者が信頼できる機関から提供を受けることの是正は可能となります。

また、出自を知る権利の観点から、精子ドナーの非匿名を原則とすれば、病院間などでの精子ドナー情報を共有でき、一人の提供者から多くの子どもが産まれている点も是正することができます。

しかし、医療機関での非配偶者間人工授精(AID)の規定は日本産婦人科学会が定めており、アフターピルの市販化にも反対の立場である日本産婦人科学会に規定変更を期待するのは困難であると考えられます。


民間の信頼のおける精子バンクが立ち上がれば、是正に向かうことも考えられますが、現時点ではマッチングサービスや個人サイト、掲示板、アプリなどが乱立している状態であり、当サイトでも精子ドナーを募り凍結精子の保存はしていますが
融解後の精子の生存率が低く、最終的にはシリンジ法にて提供させて頂くという形となっています。


客観的な立場から当サイトを含め、マッチングサービスやアプリなどを見てもやはり信頼性は低く個人間の精子提供と何ら変わりません。


今後もネット上での有名人が精子提供を開始したり、現状ボランティアが中心の精子提供がビジネス化したりと問題点も変わっていくと思われます。




現状は当事者のモラルに委ねられている

今後も精子提供により子どもを授かりたいご家庭が、精子提供を受ける方法はSNSやマッチングサイトを介した個人間の精子提供という状況が続いていくことになります。

SNSなどを見ていると、精子提供を受けて子どもを授かることに反対の立場の人が多く見受けられますが、精子提供を受けて子どもが誕生したご家庭で、制度の悪用や他者に迷惑をかけるような事例は聞いたことが無く、社会的な問題はないと考えています。

精子提供を受けて子どもを授かろうと思う方は、真剣に検討に検討を重ねて精子提供を受けるという選択をしています。

精子提供が一般的でないため、理解が得られにくい部分はあり、精子提供に関わる当事者のマナーやモラルに頼らざるを得ない状況が続きますが、情報を共有しながらトラブルが無いように、そして価値観を押し付けるのではなく当事者としての経験から理解が広がるように努めたいと思います。
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